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2006年11月30日 (木)

【書評】Dr.瀬戸上の離島診療所日記&先生助けて!Dr.コトーを探して

これは、Dr.コトーのモデルとなった実在の医師の物語。

Dr.コトーのモデル Dr.瀬戸上の離島診療所日記 Book Dr.コトーのモデル Dr.瀬戸上の離島診療所日記

著者:瀬戸上 健二郎
販売元:小学館
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鹿児島市から西へ車で30分、さらに串木野港からフェリーで約2時間、鹿児島県の西海に浮かぶ甑島(こしきじま)は、黒潮の流れを受けて南北に細長く、天然の海の幸に恵まれ、古くより港ごとに集落を持ち、風光明媚な自然と手つかずの絶景が各所に見られる、まさに秘境といった雰囲気のある離島である。
(余談ですが、形的に「大戦略」の「アイランドキャンペーン」に似てます。って誰もわからないかw実際の島は本当に平和で穏やかな島です。)

本書は1978年から、28年の長きにわたり、甑列島の南端の下甑村(現在は薩摩川内市下甑町)の手打(てうち)診療所で離島医療に尽力し、離島のハンデに屈せず数々の手術を成し遂げて、離島医療の魁を走ってきた日々の積み重ねが書かれている。

なにせ手術の内容が、胃ガン、肺ガンに始まって各種のガンから子宮筋腫、帝王切開、ヘルニア手術と、マンガ内のDr.コトーもかくやと思えるほど、およそ不可能な手術が無いと思えるレパートリーである。(193p)
赴任してきた当初は、地元の住民の方が離島でそんな手術ができるわけがないと、早々に本土に渡って手術を受けていたのだが、少しずつ人々の信頼を得て、一つ一つの手術を成功させ、設備を整え、献血台帳を作り、急患を救い続けていくうちに、気がつけばあらゆる手術が地元で可能になるという環境が実現したのである。
地元で手術ができるというだけでも、どれほど心強いことだろうか。医師が近くにいない、手術ができないということは、盲腸になるだけで、石切り場から落下して内臓を損傷するだけで、下手したら死に至る環境なのである。数百メートル歩けば病院に突き当たる街の中にいる我々には想像もつかない環境だ。そんな状況を何とかしたいと、最初半年だけという約束から、鹿児島の大病院の医局長の地位を離れて以来、離島の医療環境の充実に心血を注いでこられた先生の情熱にはただただ感服するのみである。

また、本書に書かれている甑島の人々の素朴な人柄も本当に味わい深い。前述のように、いざというときに頼れるのは自分の生命力のみという環境にいる人々は、生きることや命に対しても真摯な姿勢であることがよく分かる。夜中に胃穿孔を起こして腹に激痛が走っても、急患の電話を夜が明ける6時までじっと耐え忍んでからかける人。先生に草鞋を手作りで作って手渡すおじいさん、99%助からないインオペのガンから奇跡の回復を見せる人。そしてそのような人々に暖かい視線を送る瀬戸上医師の視線を、文章の端々から感じることができる。

そういえば先日のエントリで、離島でそれほど次から次と重篤な病気に遭うことはないだろうとか書いてしまった私だが、前言を撤回したい。この本に出てくる患者の症例は、想像以上に多様でまさに緊張の連続である。ありとあらゆる病気に一人で立ち向かわねばならない離島の医師の、激闘の日々と言って差し支えない生き様がここに書かれている。
まさに医師と患者が、手に手を取って作り上げた命の砦、不可能を可能にした物語は必読と言って良い。

もう一冊、瀬戸上医師を招聘した、下甑村の西課長の書かれた本も併せてお勧めしたい。

先生助けて!―Dr.コトーをさがして Book 先生助けて!―Dr.コトーをさがして

著者:西 秀人
販売元:小学館
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Dr.コトー前史というべき、瀬戸上医師が赴任してくるまでの地元の民生課長の医師招聘の奮闘が描かれている。
台湾から招聘した医師の物語や、甑島を文字通り終の棲家とした歯科医師の物語、赴任期間の長い医師や短い医師、さまざまありながら、その中で瀬戸上医師がいかに稀有な存在であるかが実感できるのではないだろうか。
2冊を合わせて読めば、離島医療の実態、さらに甑島の人々の人柄や気候などがきっと実感していただけるだろう。

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最後に、写真は甑島の北方、上甑島の何気ない林道の途中にある、地元の役場職員に教えていただいた「ヘゴ」の自生地の北限らしい。
見ての通り、熱帯でも亜熱帯でもない独特の植生の、急な山のすぐ奥に海が見える、険しいが変化に富んだ、手付かずの自然である。
私は釣りはしないのだけど、釣り人と魚好きにとってはまさに天国とのこと。興味のある方はぜひ一度足をお運びください。(いちおう宣伝)

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