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2007年6月25日 (月)

社会保険庁の文書管理について

大分話題に乗り遅れた感があるが,社会保険庁の一連の事態について思うところを記しておきたい。

年金台帳、自治体が廃棄の例も 確認手段なくなる

2007年06月24日23時08分

 社会保険庁のずさんな年金記録の管理が問題になる中、国民年金保険料の納付を裏付ける「最後のよりどころ」である市町村がすでに納付記録を廃棄し、確認 できないケースが各地で起きている。保険料の徴収業務が社保庁に移管され、すでに手を離れていたはずの自治体側には「今ごろになって」という戸惑いが広が る。政府は救済策を打ち出したが、証拠を示せない人の納付がどこまで認められるかは不透明だ。

 

市役所でしばらく文書管理関係の業務をしていたこともあって,社会保険庁の文書規定の内容を手に入れないことにはどうにも判断ができないと思って色々検索してみたが,Web上で見付けるのは難しそうだ。ここでは社会保険庁が,通常の自治体と同じぐらいのレベルの文書規定があるものと仮定して話をさせていただく。

追記:厚生労働省文書管理規定はこちら

まず大前提として,ほとんどの文書はいつか廃棄される。文書規定には必ず(でもないか?)文書分類表が付いていて,業務で発生する文書は表内ですべて想定されており,作成した(主として所属長の決裁を受けた)文書は翌年度当初に簿冊に編綴(へんてつ)し,1年間執務室内で保管し,保管期限が過ぎた文書は書庫内に納められ,3年,5年,10年,永年といった規定の期間保存される。永年保存文書といえど,20年間保存すると廃棄あるいはそれなりの公文書館に移管することが推奨されている。

そして,保存期限が到来した文書は必ず廃棄しなければならない。保存のためのスペースが有限であることもその理由に上げられるが,情報を持てば持つほど個人情報の漏洩のリスクは高まるし,保存年限の切れているはずの文書が存在することで,色々ややこしいことになる。確か薬害エイズの一件でそのようなことがあったと思ったけどなんだったかな。

とにかく,然るべき文書を然るべきタイミングで廃棄するのにはちゃんとした理由がある。何も都合の悪い文書を隠そうとしているわけではない。本当は現状はもっと深刻なのだ。その「都合が悪い文書」が,どこにどれだけあるのかすら分からないのだから。

余談ながら,面白いことに文書が電子化されても文書の保存~廃棄サイクルというのは意外に有用で意味があるのだが,これは別の機会に書ければ。

というわけで,社会保険庁サイドのルール(おそらく内規だろう)に則った処理がされていれば実際のところ問題にならないと私は考えるわけだけど,当該文書の保存年限が不明で,当事者が文書管理の実態を説明できない以上,やはり文書管理体制が杜撰だったんだろうな。と批判されてしまうのも止むを得ない。

私としては,この騒動を対岸の火事として暢気に見ていられるほど,自分達の文書管理が上等なものだと思っていない。ついこの間まで,保存も廃棄も現場担当者の勘と経験に頼った職人技の世界がまかり通っていた。私が担当の間は必死になって分類表に基づいた文書管理を進めてきたわけだけど,何と言ってもこれほど優先度の低い業務はない。毎年保存文書リストの提出を求めるも,提出する課所は良くて半分ぐらい,ほとんどの課は,ロクな目録もなしに余計な個人情報のたっぷり詰まったファイルをぎゅうぎゅうと倉庫に詰め込んでいく。

無理もない。誰だって既に終わったことの整理より,目の前の山積する業務に立ち向かう方が優先に決まってる。なにより過去は早く忘れたいものだ。

その一方で,公文書開示請求が今日来るか明日来るか,今の文書管理体制では倉庫から目的の文書を探し当てるのは至難の業,最終的には,ある日突然開示請求が来て,当該文書の存否から開示不開示の判断まで,何から何まで後付けでやらなければならないことになる。現在の法律では,開示請求がされてから文書の開示/不開示が決定されるまで15日とされているが,これでも間に合わない。私の知る限りでは,市町村役場から中央官庁に至るまで,文書管理や情報開示に関しては似たり寄ったりなのではないか。

その証拠に,総務省から出されている文書管理のガイドラインも,定められているのは「文書規定を作って,文書分類表も作って,期限まで保存して廃棄しましょう」というごくごく基本的な部分に過ぎず,具体的な方策やノウハウは全くといっていいほど示されていないのが実情である。何より文書管理には大きく分けて簿冊方式とファイリング方式があり,そのどちらを使うかさえも個々の組織の裁量に任されている。つまり,文書管理に関しては一切が法制化されていない。

話がだいぶそれたが,社会保険庁の歴代長官,厚生労働大臣が歴々と代わっても文書管理が確率していなかった結果,このような事態を招いたとすれば,当然歴代の責任者の責任も問われるわけで,なにより現場が文書管理担当者の言うことを聞かなかった:Pのではないかと推測される。真剣に警鐘を鳴らした担当者も,ひょっとしたらいたのかも知れない。が,廃棄した今となってはどうしようもないので,どんな条件を満たせば年金を払ったとみなせるか,という運用のレベルに持っていかざるを得ない。

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コメント

なるほどー。勉強になるなあ。
どうもこの手の議論って、現場の実態を離れた
空論になりがちなんですよね。
「文書管理がずさんだ」と声高に叫ぶのは、たいてい
実際に文書管理をしたことのない人なんだよなあ。
実際に仕事をしていて、いろいろな重要な文書は
保存と廃棄のタイミングってホント悩むし、
保存管理の方式も悩ましい。
あちらをたてればこちらがたたない。

僕なんかだと、HDDの整理整頓ですら
難しいと思うんだけど、みんな出来てるのかなぁ。

投稿: gizmo | 2007年6月26日 (火) 09:33

gizmoさん,どうもです。いやまったくそうなんですよ。
想像と,やってみるのとでは大違い,現実を見せ付けられるのが文書管理の醍醐味といった感じがします。

投稿: eviano | 2007年6月26日 (火) 10:51

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