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2007年7月 2日 (月)

宙に浮いた年金記録の実際

しばらく出しあぐねていた考えがあるのだが,いろいろ考えもまとまってきたので書こうと思う。
今回の社会保険庁のいわゆる「宙に浮いた年金記録」問題は,実に良くできたフィクションだということだ。

例えば,私が65歳になって社会保険事務所に行き,年金の受給手続きをする光景を想像してみる。
職員は私のこれまでの年金の納付記録を当たり,勤めていた期間や離職していた期間,等々の履歴をつなぎ合わせ,一連の納付記録を作る。
そして,一定の期間保険料を納付していたと確認できれば,晴れて私も年金を受給できることになるわけだ。

日本の年金は賦課方式なので,これまで納めてきた金額というのは,実はそれほど重要ではない。2007年現在の国内の総給付額に応じて一人当たりの納付基準額を算定し,しかるべき額を徴収したら,お金は速やかに受給者に送る。我々が実際に受ける年金は,自分自身で積み立てたものではないのだ。

また,一旦受給権利が確定してしまえば,その権利は死ぬまで有効であり,納付記録そのものもほぼ不要になる。
途中記録に曖昧な部分があったり,納付記録を廃棄して残っていなかったとしても,領収書や雇用主の記録等をたどり,なんとか証拠を見つけ出して,かなりの確度で納付していたことは把握できるだろう。
さらに,通常の年金の受給資格は60~65歳という停止条件が付いているので,年齢以下の対象者の納付記録というのは,実際の話,きちんと保管してさえいれば,最低限滞納が無いか管理しておけばいい物だし,実際業務のメインストリームではなかった物だと思うのだ。

ここまで書けばお分かりになるだろうか。
多少推測が入るのだが,これまでの社会保険庁における受給資格確認業務とは,上に書いたようにバラバラになっていたデータを一連の納付履歴として調製ことであって,個人ベースでの納付記録があれば御の字,無ければ無いでなんとか証拠を見つけ出そうというのが実際の業務ではなかったのだろうか。
もっと言えば,年金記録を参照するのは65歳になってからで十分であり,お客様といえば65歳を迎えた方々だけで十分であり,予算も人員もそのような業務を想定しており,年齢未到達である個々人のデータを,いつでも引き出せるように準備しておくとか,納付途中の年金を払ったかどうかを第三者機関まで作って逐一確認する作業が必要などとは,夢にも思わないどころか,予算もついてなかったのではないかと思う。

これまで65歳の受給年齢に達した人だけを相手にしていたのが,今回の問題の影響で急に全ての成人世代が社会保険事務所に殺到したのだから,おそらく通常業務どころではないだろう。社会保険庁の無駄の多い体質が改善されるべきという考えに異論はないが,あえて問いたい。果たしてこれまでの年金関連法に,個々人の記録を逐次把握できるようにすべきであると書いていない点や,また,年金関連の予算について,そのようなデータ管理をする予算をつけていないことに,野党は反対討論をしたのだろうか?

確かに,文書管理の問題や使途不明金等々,社会保険庁の乱脈ぶりはつとに報道されているところだが,それと実際の業務内容とはまた別の話であり,個人ごとの年金記録を逐次見たいということであれば,そのための予算を計上し,人員を配置すれば,いかに働かない社会保険庁職員といえど,それなりの成果物を示してくるはずだ。レストランがメニューに示されていない料理を提供できないことに,腹を立てる客がいるだろうか?

確かに自分に関する情報をいつでもリアルタイムに見たい,という要求が国民の側から出ることは,官と民の関係における大転換といえる事態であり,利便性を高める上で是非とも推進すべきと考えるのだが,注文する前によく考えて欲しいのは,これは今まで我々が注文すらしてこなかった料理であり,特別メニューには特別な費用がかかること,その2点をしっかり自覚した上で,注文にはしかるべき対価が必要になるということを肝に銘じるべきだ。

そういえば今度「年金定期便」という名目で,自分が将来受給できる年金額を逐一報告するサービスが開始されるそうだが,この紙はよく考えてみれば今現在の自分自身の権利義務になんら寄与するものではないのである。とはいえ,将来に夢と希望を与える重大な使命を持ったレポートであるから,どうか余計な国費を使いすぎないよう,しかるべき適切な費用で実現できるようにしていただきたいと切に願うのである。

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