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2007年9月10日 (月)

NHKスペシャル:コムスン撤退の衝撃

▽コムスン撤退の衝撃▽全国に“介護難民”家族・ヘルパーの悲鳴不正の真相

NHKスペシャル◇"コムスン・ショック"に揺れる介護現場の現状を探る。6月、介護サービス最大手のコムスンが厚生労働省から処分を受 け、事業からの撤退を決定。その影響で、過疎地や深夜の訪問介護でコムスンのサービスを利用してきた人々を中心に"介護難民"が出てきている。それらの採 算が取りにくい現場は、コムスンが社員に過酷な労働や厳しいノルマを課すことによって担ってきた。また、これまで認められていた家事援助などのサービスが 突然打ち切られ、日々の生活に困っている高齢者も増えている。その背景には、国による介護費用給付の抑制策がある。介護事業を民間に開放したことで給付額 が予想以上に急増し、国は"量の確保"から"質の重視"へと急きょ方針を転換した。

体調不良のため家でテレビを見ていたら丁度やっていた。
番組内容をたどりながら,色々思うところを書こうと思う。

・ヘルパー労働者の苛酷な就労環境
番組前半はコムスンのヘルパーの勤務実態について,午後10時から明け方まで8箇所の利用者を回ることで,1箇所につき3600円程度の介護報酬が出ると して一晩30000円弱の報酬を得る。苛酷な深夜勤務で手取りは22万円程度とのことなので,待遇は相当厳しいと言わなければならないだろう。

・介護費用の爆発的な増加
先だって5兆円を突破した介護報酬だが,近年のうちに10~15兆円に届くと言われ,将来の介護保険料の試算も一人当たり月6000円を超えるとされている。
利用者,提供者,そして保険者たる自治体の財政のどこも削りようがないほど逼迫しており,介護報酬体系としてもうお金が回っていかない状態だと言って間違いない。

・朝令暮改の厚生労働省
そこで厚生労働省は介護給付費の抑制に動き出し,先日の介護保険法の改正において要介護1の大部分を「要支援2」とし,ケアプラン作成業務を自治体所属の 包括介護支援事業所の所掌とし,介護支援事業者にとってボリュームゾーンであった顧客の多数を奪ってしまった。実際のところこれがコムスン撤退の淵源であ り,不正行為に走らせた引き金とも言える。

また,これまで現場の判断で行われてきた介護保険制度におけるグレーゾーンとしてのサービスも,厚生労働省の運用上の見解で違法として処断され,昨日まで何も咎め られなかった行為が保険給付返還の対象となり,程度によっては県による事業所指定の一発取り消しもありうるという状態になった。

実際地元の業者でも,これまで何の処分もされていなかった行為(例えば,デイケアの送迎のついでに隣にある病院で治療を受ける等々)が,ある日突然違法とされることは枚挙に暇がない。

実際のところ介護保険スタート当初は,事業者や利用者がどのようなサービスの使い方をするかの想定が不十分で,制度の盲点を突いたサービス利用法や,サービス業者と病院等の親組織との関係で微妙な点がよく処断された。
これらの裁量は厚生労働省にとっては「柔軟な運用」「走りながら考える」として反省どころかむしろ胸を張って誇らしげに語っているが,福祉の世界にどっぷ りと浸かっていた関係者ならともかく,これから参入する民間の営利企業からすれば,ルールが不明確かつ規制の強化による突然の事業継続リスクが高まること に他ならず,長期の事業計画を持つのが非常に困難であり,コムスンの例を見て好き好んでこれから介護事業に参入しようという業者はよほどのリスクを取る覚 悟のある事業者か,あるいは参入当初からモラルがハザードしてしまっている事業者になってしまうのではないかという憂慮を持たずにはいられない。

筆者の考えを述べれば,やはり介護報酬はもう少し増額しなければならない(事業者の労働の価値が認められていない)し,高齢者は費用の負担について無自覚であるし,何より介護保険で生活が改善した,つまり要介護状態が好転した実例が少ない。
批判を承知で言えば,介護保険は公的セクターとして最低限の,ギリギリのサービスを提供するしかないのではないかと思う。
制度設計の上からも,本来は社会・地域・家庭というそれぞれの介護機能があって,それぞれを補助する形で公的な保険制度があるという姿を想定しているが,実際のところほとんどの利用者にとって介護保険しか頼れるものがないのが現状である。社会的な様々な組織,近所づきあい,そして家庭が崩壊してしまって久しい(鹿児島県の単身高齢者世帯の多さは特 筆に価する)。

ここまで色々書いてきたが,結論としてやはり制度を利用する高齢者に自覚の強化を訴えたいわけである。

介護保険がこうなった原因は,やはり現在の70~80台の高齢者の無知と無自覚にあると言ってしまって,いいのではないか。

財政的にも,政治的にも,そして思想的にも,現在の日本の姿を形づくってきたのはやはりこの世代であり,介護の問題とは,とりもなおさず,人生の最後において,自他ともどもの総決算を迫られている時だと言える。

私が高齢者を具に見ていて本当に残念に思うのは,認定結果が出てケアプランを作る際に,『どのような生活を送りたいかをケアマネジャーに伝えてください』と言っても,主張することそのものを忘れてしまっていることだ。誰と契約して何の契約をしているのか分からないまま判を押し,どんな目的で選択したのか分からない介護サービスを漫然と使い,要介護認定が上がれば上がるほど補助がもらえると誤解し,自分の容態が重度になるように血道を上げている。これを地獄と言わずして何というのか。私は介護保険から一時期離れて,復帰するとともに世代交代に期待したが,正直これらの状況に全く改善の兆しがない。

どうか高齢者の皆さん,最後の御奉公だと思って,一人ひとりが自覚を持って業者と契約し,介護保険料を納め,効果的なケアプランを選択し,要介護度の改善を喜び,最後まで生きる目標を持ち,最期の瞬間に本当に楽しかったと言える人生を全うしてください。
それが我々,介護保険に関わる人間の心からの望みなのですから。

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