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2008年2月12日 (火)

父と子

本日の勤務時間,私の係に電話が来た。

40歳代の男性で,父親と2人暮らし,奥さんは10数年前に他界。要介護認定の申請の仕方を教えて欲しいとのこと。
二人暮らしで他に家に出入りする者はおらず,仕事が忙しくて10時過ぎに帰ってくるため父ともほとんどコミュニケーションがない。
最近近所の噂で遠くまで徒歩で徘徊しているのを見たのでそろそろ介護を考えたほうがいいのではないかと思って聞いてみた,とのこと。

とりあえず私は,介護保険被保険者証と主治医のフルネームを用意して窓口に来られてみてはどうですか,と尋ねてみたが,仕事が忙しくていつ来れるか分からないということなので,分かりましたそれでは包括支援センターに情報提供して地域の支援センターから実態調査がてら様子をみてもらいましょうと話し,電話を切るとすぐさま隣の課にある包括センターに事情を説明し,訪問してもらった。

2時間後,地元の支援センターの職員が真っ青な顔して役所に来た。

本人宅に行ってみたところ,丁度本人がいたので話をしてみようとしたが,意味不明な受け答えをして言葉が通じず,食事(訪問給食を利用)もまともに食べておらずほぼ脱水状態,床にはあらゆる物が散乱し,布団の近くには尿の水溜りができ,話をしながらトイレにいきたそうな動きをしたかと思うと,その場で排尿しようとしたとのこと(お食事中の方すいません)。
なんとか身体を支えて家の外に排尿してもらったが,他にも疥癬等の症状があり,限りなくネグレクトに近い状態だったので,とりあえず介助しながら食事を摂取してもらい,落ち着いたところで庭先から包括支援センターの職員に電話報告し,虐待相談窓口にまで話は回り,ようやくのことで帰ってきたものの,今後の処遇を真剣に考えなければならない大変な問題ケースだったとのこと。

報告を聞いて,先ほどの電話で私が聞いた依頼者の深刻味のまったくない声とのギャップに愕然とした。
こんな電話が来たらすぐに包括に回していいからねと言われたが,あの話の内容ではここまで事態が深刻だとは到底想像できない。
包括に回さずにそのまま認定申請を待っていたらどうなっていただろうと思うと怖いものがある。

自宅に行った支援センター職員の話によると,息子が日常的に10時過ぎに帰ってきて利用するスペースと,その頃すでに寝ている父親を邪魔しないように,2人の領域にまったく行き来がなく,お互いが無関心に過ごしているうちに状態が悪化していったのではないかと思われる。

また,市役所の福祉的な発想ではあるが,周囲に助力が望めない独居のお年寄りに比べて,稼得能力のある息子が同居している世帯は介護力があると見なされて支援の優先度が低いため,今まで全くと言っていいほど福祉サイドからの働きかけは行われてこなかった。
高齢者+40~50台の長男という組み合わせの世帯は実は思いのほか多く,働き盛りの息子がこうやって親の要介護化を見逃すというケースも,稀ではあるが存在している。

この前のNHKにスペシャルにあった例にあるように,重度の認知症と思われる症例も脱水症状を抑えたり適切な投薬を行うことによって,症状が改善される場合が有り得る。これからおそらく支援センターの職員が大至急認定申請を書き,何らかの介入がなされるだろう。

それにしても,息子さんの忙しさが気になる。休みを取って訪問調査とケアプラン作成に協力してくれるだろうか。

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