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2008年5月 3日 (土)

国保担当1月につきメモ

まあゴールデンウイークだし、最近更新サボってるし、気楽に今考えていることをまとめてみる。

介護保険から国保に仕事が変わって率直に思うのは、いわゆるあの『走りながら考える』介護保険のノリが懐かしいなということだ。

それも無理はない。介護保険はたかだか8年、方や国保に至っては70年(!)の制度の歴史がある。
改正に次ぐ改正を重ね、国民の医療の安心を守ってきた。
今やどんな境遇の被保険者だろうと平等に扱う、隙間一つない制度に成長してきていると思う。
だがそれは同時に、制度の全貌を知る者が極めて少なく、肝心の利用する当事者が自分の位置を見失うほどの複雑怪奇な制度になってしまったということだ。

試しに、高額医療費の払い戻し制度を(おさらいの意味も込めて)紹介したい。

がんで入院して、1月に100万円の医療費がかかったとする。
部屋代や食事代を引いた「正味の医療費」が100万円だ。
まず病院を退院する際、とりあえず保険証に書いてあるとおりの3割の自己負担を支払う。
(減額認定証を事前に受けている時はこの限りでない)
30万円を一旦支払う。

そしてその領収書を持って市役所の窓口に行き、高額医療の払い戻しを申請する。

いくら払い戻しがあるのかの判断基準が以下のとおり

・本人の属する世帯の所得
・年齢(70歳未満、70~75歳、75歳の後期高齢者)
・高額医療費を受ける回数
などなど。

とても素人がその場で判断できるものではない。
結局こういった制度は、元をただせばあらゆる事例について負担の不公平が生じないように、継ぎ足しに継ぎ足しを重ねていった結果、昭和の臭いの強い官僚主義的パターナリズムの成せる業だと思う。

実際に結果だけを考えてみると、月100万近い費用のかかる医療が、10万そこそこの負担で済んでしまう制度というのは、世界中どこを探してもそうそうない。外国の評論家が日本の国民皆保険を指してマジックだと言うのも理解できる。
非常に高度に汲み上げられた非の打ち所のない制度であると私も思う。
ただ利用者にとって理解が至難であるという一点を除いては。

その点介護保険は非常にシンプルだと思う。
市役所から出すのは要介護認定のみ。
具体的なサービスの構築はケアマネジャーに任せてしまっている。
サービスを利用した結果(要介護度の悪化あるいは改善)についても自己責任。
限度額はあるけど、どれだけサービスを使うかも個々人に委ねられている。
使ったらその分だけ1割負担であり、負担額も分かりやすい(はず)。

両者を比較して思うのは、自分が使う医療・介護サービスが本当はいくらかかっているのか、その点が明確化されているかどうかだと思う。

これはひとえに医療制度の問題に限らない。

最近病院に行った方は手元の領収書を見てほしい。
その領収書に『病院の売り上げ額』が明確に書いてあるかどうか。
点数しか書いていない病院もあれば、ひどいのになると請求金額しか書いていない病院もあると思う。都会のほうの病院はそうでもないかもしれないけど。

いわば自分のおこなった仕事の対価を、胸を張って受け取れているかどうか。
それを隠したり、ごまかしたりするような商売はプロとは言えない。

「今回の医療費は1万円です、そして保険に加入しておられますので、お客様のご負担は3000円になります」

本来ならこう言うべきはずのものが、国民皆保険が成立して70年経ってしまうと、いつの間にか本当の医療の価格を忘れ、1万円のものが3000円の価値しかないものと信じてしまっている。現に注射1本が数百円で受けられると、本気で信じ込んでいる高齢の方々がいくらでもいる。

医療の価格、と書いたが、全国共通で「医療の値段」が画一化されているのも日本独特の現象であるし、国民皆保険を背景にした診療報酬の政治問題化が進み、本質を見失った議論が繰り返されてきたが、このあたりは「医療の値段」という本に詳しい。

医療の値段―診療報酬と政治 (岩波新書) Book 医療の値段―診療報酬と政治 (岩波新書)

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あるいは「ブラックジャック」とか(アフィリはつけないよw)

医療費の高騰が叫ばれている中、私が提案したいのは、病院の領収書の明確化、あと利用者から見てシンプルな制度への見直しでしょうか。

後期高齢者についてはまた改めて書かなきゃ。

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